ちなみに初参加です。
8つの症例検討のセッション、2つの振り返りセッションがありました。
8つのセッションのうち6つのセッションは認定行動療法士か専門行動療法士だったことを今知りました。でも専門とか認定とかそんなの関係なくても、どんどん発表すればいいと思います。若手を育てるサポーティブな会だと思いますし、ただケースを聞くだけが強化されるとすれば何もスキルは身につかない。発表して、自らの妄想を打破してもらうことに限ります。
振り返りセッションは今年初の試みのようで、発表者とコメンテーターとの議論の中で、発表者と参加者が何を学んだかを共有する、というセッションです。
「質問行動を5回実施する」ということを決めて参加しました。
コロキウムは、行動療法初学者(大学院生から臨床にでたての心理士)がベテランを交えて合宿形式で学ぶ、参加者のスキルアップを狙ったものだそうです。
‘コロキウムじゃなくて、コロシアムだと思ってました’と言ったら、熊野先生や谷先生にウケてもらいました。でも熊野先生いわく、昔は新人をボコボコにしていたということです。だけど、今はマニアックな行動療法の先生が退官したことや中堅くらいの先生が育ってきたこと、セラピストの活動の場が広がっているのでスキルが高くなっていることでボコボコにしたくても、する必要がないくらい成長しているということでした。コロシアムというよりも、アットホームな雰囲気のなかで症例検討会は進んでいきます。
①症例1 継続する学習が定着しがたい子の支援 見手倉 治 福岡市立高木小学校
コメンテーター:首藤先生
良かったところ:子ども愛は伝わってきた。②③⑦⑧は行動データがなかったのに対して、データを集めていた。実際の写真を撮っているので、イメージがしやすかった。コメンテーターの優しさがやさしくフォローする姿が嬉しくなった(なので私も適当な提案をしてみた)。
さらに良くするために:データをとっているのに、結局は良かった・良くなかったを主観的に評価している。ABAとはセラピストの思い込みで介入を追加したり、なくしたりするものではないので、しっかりと行動の変化を見てあげて、自分の介入の評価をするとよいと思った。発表もそうだが、セラピーにも立ち止まるチカラがあれば、理論的にこなしていけると思った。立ち止まるということは確立操作になる。行動療法を実施するには、スキル云々よりも実施する姿勢が大切なのである。以下にクライアントに正の強化を与えるのか、罰のないように適切な行動を作っていってあげるか、ということを考えるのである。罰を使ってしまうと、それは素人と同じということである。
しかし発表者はABA初学者、参加者の中にはABAを専門とする人はかなりいるだろうに、発表者のキャラクターの問題やABAと大きくずれてしまっているので諦めたい気持ちはわかるが、そこはコロキウム。参加者はABAをちゃんと教えてあげたらいいのに、と思う。こうやって、学んだことを実際に行う人が増えるのはよい、だがそれをフォローしていく体制があるとよい。そうじゃないと、セラピーを受ける子もかわいそうである。TEACCHのように構造化して離席行動しにくい環境をつくってあげるのもいいんじゃないかなぁ。
症例2 共感的なカウンセリングが奇行の動因を減らした小学生と家族への介入 岡嶋 美代(専門行動療法士) 千代田診療クリニック&なごやメンタルクリニック
コメンテーター:小関先生
良かったところ:レジェンドケースがみれた。ABAをE/RP視点で介入しており、ABAを分解していくと、限りなくE/RPに近づいていくのではないかと思った。分析を相当すっとばしている・内在的強化を意識しているのかわからないという手厳しい意見もあったが、型にはまった分析はしないにしても、内在的強化という言葉は使わなくとも、それを自然とこなしているのが伝わった。
さらに良くするために:このケースをシンプルに説明すると、ペアレントトレーニング。集団療法・訪問セラピーなどセラピストのモデリング学習が両親にも伝わったのが有効成分だったのではないかと思った。衝動の減らし方についてハビットリバーサル・飽和化など挙げられていた。常同行為をしたくなる衝動?ということだが、衝動って行動分析的にどう捉えるんだっけ?行動と結果の随伴関係が強くて強化価値が高いもの?リストカットや薬物みたいに「やめられない、とまらない」のような行動じゃないから、衝動行動っていう表現がぴんとこないなぁと思った。
症例3 小学生女児の強迫性障害に対する認知行動療法を行った事例 (今井)関根香緒里(認定行動療法士) カウンセリングルームさくら、新潟大学
コメンテーター:西川先生
良かったところ:エクスポージャーでは、適当なところでとどめるということをしている。もやもやがあるままに○○する、もやもやをすっきり解消させないように○○するという行動を作っていくことがエクスポージャーになるということがわかった。
さらに良くするために:主張行動を主張している発表者の機能がわからなかった。児童のケースなので、はじめはセラピストの前だから主張しなかった、それがセラピストにも慣れてきて主張できるようになったと考える方がシンプルだと思った。
症例4 頭の忙しさ・対人緊張・疲労感等を次々に訴えた成人男性に対する認知行動療法:症例報告 藤目 文子(認定行動療法士) 府立みくまり病院
コメンテーター:谷先生
良かったところ:言語数をデータに用いていた。データに沿って、アセスメントして介入を変えるなど他のケースよりちゃんとしていた。
鈴木先生より、話すより聞くという行動を形成したほうがいいんんじゃないかというアドバイスがあった。なるほどと思った。
さらに良くするために:ホームワークの設定やフェイディングなどで般化を狙っていく必要があった。カウンセリングルーム内でのおしゃべりを適切な行動にする、というのが目標ではない。クライアントがどうなりたいのかも不明だった。カウンセラー行動もモニタリングすれば、介入があっているかあっていないかはっきりしそうだった。用語のオンパレードが目立った。強化の用語の使い方を間違っていた(強化子と考えられるものを提示した、ということを強化と言っていたが、提示した結果行動が増えたら強化)。
症例5 不眠恐怖のある入院患者に対して認知行動療法を導入した症例 近藤 和樹
コメンテーター:岡嶋先生
症例6 習慣飲酒で不調を呈していた妻と夫に対するCBT 別司 ちさと(認定行動療法士) CBTセンター
コメンテーター:神村先生
良かったところ:アルコールの問題に取り組む心理士もいるのだなぁと感心した(行動療法学会でアルコールについてあまり取り扱われていない気がするため)。アルコールのCBTは飲酒行動↓だけじゃなくて、その他の正の強化を増やしていくことが大事なんだなぁと、あらためて実感した。
さらに良くするために:抄録で確立操作の誤字が2か所あった。
症例7 認知・行動療法と薬剤調整の開始時期の同期化-HIV感染恐怖を伴う遷延したうつ病に対して- 宮崎哲治(専門行動療法士) 川崎医科大学精神科学教室
コメンテーター:熊野先生
良かったところ:完璧に発表しようという気持ちがプレゼンで伝わってきた。過去にコロキウムでボコボコにされたという回避行動であることが後にわかった。そういうのを聞いて、とても接しやすい先生だと感じた。
曝露はルール支配行動、実際に体験することで随伴性形成行動になる。と熊野先生が解説して、なるほどと。
さらに良くするために:診断が違う気がしていたが、それを熊野先生が突っ込んでくれてスッキリした。観念が薬物でマスクされているというコメントを言えないのが、能力の差だと思った。
減量とE/RPを同時にするメリットってそんなにないような、むしろ副作用が出て無駄なことがあるなら減量するべきだと考えた方が患者のメリットだと思うがどうなんだろう。うまく心理教育できないから薬の減量を用いたということだと熊野先生も解説していた。
症例8 「死ぬまで治らない」とあきらめていた症状が改善された震災被災者へのProlonged Exposureによる介入 小林奈穂美(専門行動療法士) カウンセリングルームさくら、新潟大学
コメンテーター:鈴木先生
良かったところ:PEの復習になった。セラピストはあまり90分セッションでやっていないのだぁということがわかった。コメンテーターの鈴木先生が、トラウマ治療の後は行動活性化をセットにしないと浦島太郎状態になるよ、と言われて、なるほどなぁと思った。
さらに良くするために:PTSDだと思ったのにIES-Rをつけていないのは不自然だと感じた。どのように評価するつもりだったのかわからなかった。診断がぶれていたことも関係しているが、PEをしなくても実生活の曝露を続ければ、短期でよくなったようにも思う。
〇おわりに
熊野先生が最後に、「なるべく短期にやりましょう。少しでも早く良くするということを意識しましょう」というようなことを言っておられた。
カウンセリングの回数って限定されるものではないけど、看護だと早く良くなってもらって退院してもらいたい(そうして少しでも仕事を減らしたい)とも思うので、短期で終わらせたくなるものではないだろうか。
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